眉間のシワや目つきが悪くなる「眼瞼下垂」若い人も要注意!

おでこや眉間に刻まれる深いシワは、年齢のサインともいわれますが、実は「眼瞼下垂」が関係していることがあります。目が開けにくくなって視界が狭くなると、知らず知らずのうちに「眉毛を上げて目を開く」「おでこに力を入れる」「良く見えないため眉間に力を入れる」など、前頭筋(おでこの筋肉)や眉間の筋肉を酷使したりするようになります。

眉間にできるシワは、実は皺眉筋や鼻根筋など、眉間周りの筋肉が繰り返し収縮することが原因です。年齢と共にエラスチンやコラーゲンが減ってくると肌の弾力が低下し、さらに乾燥によって肌の水分保持力も落ちていきます。また、パソコンやスマホを長時間見るときに、眉間に無意識に力を入れる「クセ」も大きな要因になります。

まぶたが重く感じている方や肩こりや頭痛に悩まされている方の中には「隠れ眼瞼下垂」が潜んでいる場合があります。 眼瞼下垂の症状があると、まぶたを開ける力が弱くなっているために、おでこの筋肉を無意識に使って目を開けようとするようになります。
まぶたを開けるため眉間にも力を入れてしまい、気づかないうちにシワが深く刻まれてしまうようになります。また、まぶたが下がることで黒目が隠れてしまうと、眠そうな目つきに見えたりすることもあります。さらに、眉を上げる癖が強い人は、目つきが悪い印象を与えてしまうこともあります。

2000年代の研究では、「眼瞼下垂」とおでこにできるシワには高い相関があり、目が開けにくくなるほど前頭筋の活動が増え、その分だけおでこにシワが刻まれるという報告があります。

Horizontal Forehead Lines: A Reflection of Eyelid Ptosis or Blepharodermachalasia(額の横じわ:眼瞼下垂や上眼瞼皮膚老化の影響)

引用:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30030561/
著者:Yuewei Wu-Fienberg 1, Kunaal R Bafna 2, Bahman Guyuron 3 4
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PMID: 30030561 DOI: 10.1007/s00266-018-1198-7

この研究は、50歳以上の160名の写真を過去のデータと比較して解析し、眼瞼下垂や上まぶた(上眼瞼)の皮膚がたるんで、余った皮膚が垂れ下がる状態と、おでこの横ジワができる関係を調査しました。その結果、おでこに横ジワがある患者の90%が眼瞼下垂を伴っており、横シワは前頭筋(おでこの筋肉)を過剰に使うために生じるという明確な関連が示されました。
眼瞼下垂がある場合、シワ改善のためにボトックスなどで筋肉を動かなくすると、かえって視野が狭くなるリスクがあるため「シワだけを消す治療では不十分」と注意が促されています。

眼瞼下垂とは、まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋など)の働きが弱まり、上まぶたが下がってしまう状態です。視界が狭くなるだけでなく、「まぶたが重くて目が開けにくい」と感じたり、慢性的な肩こりや頭痛に悩まされたりすることもあります。まぶたを開けようとして無意識におでこや眉間の筋肉を使うようになるため、おでこや眉間に深いシワが刻まれてしまうこともあります。

眼瞼下垂の原因はいくつかありますが、もっとも多いのは加齢によるものです。加齢に伴って上眼瞼挙筋(まぶたを挙げる筋肉)と瞼板(まぶたの裏側にある硬い板状の組織)との結合部分が少しずつ緩んでしまうことがあります。
また、若い人でも眼瞼下垂になることがあります。長期間ハードコンタクトレンズを使用している場合や、花粉症やアトピーなどで目のまわりにかゆみが出て何度もこすってしまう場合、アイプチやつけまつげなどのアイメイクでまぶたに負担がかかることも原因になります。まぶたをぶつけるなどのケガ(外傷)によっても起こることがあります。 一方、眉間のシワは、表情のクセや加齢が主な原因です。加齢や紫外線、乾燥などの影響で肌のハリや弾力がなくなってくると、怒ったり集中したりして眉間に力を入れたときにできる折れ目が、徐々にシワとして定着していきます。眼瞼下垂になるとうまく上がらなくなるため、視野を確保しようとして、無意識に額や眉の筋肉を使ってまぶたを引き上げるようになります。この時に眉間にも力が入るため、繰り返すうちに眉間にシワが刻まれるようになります。

ボトックスには筋肉の働きを弱める作用があります。眉間の筋肉にボトックスを注射することで、表情筋の動きを抑制し、眉間のシワを目立ちにくくします。
個人差がありますが効果は3〜6ヶ月持続します。注射後3日から7日で効果が現れ、定期的に注射を繰り返すことで持続力もアップします。ただし、皮膚に刻まれた深いシワにはボトックス注射だけでは不十分な場合があります。当院ではシワを埋める効果が期待できるヒアルロン酸やスーパーコラーゲン注射との併用をお勧めしています。
ボトックス注射は、施術時間が短くダウンタイムがほとんどないことがメリットです。リスクには、腫れや内出血、違和感などがありますが、通常数日で解消されます。

ボトックスなどの“注入施術”で表情ジワの働きを抑えますが、眼瞼下垂の手術は「上眼瞼挙筋(まぶたを挙げる筋肉)」の機能を改善する治療です。
眉間のシワの原因が眼瞼下垂の場合は、手術によってまぶたを開ける力が戻るため、前頭筋や皺眉筋や鼻根筋に力を入れることがなくなり、眉間やおでこのシワが目立ちにくくなる可能性があります。
ただし、すでに深く刻まれたシワや眉間に力を入れるクセが残る場合は、スーパーコラーゲン注射との併用がお勧めです。

眉間のシワそのものの治療は、保険適用にはなりません。
しかし、医師によって眼瞼下垂と診断された場合は、その治療として行う眼瞼下垂の手術には保険が適用されます。
ただし、シワを目立たなくするためのボトックス注射など、美容目的の治療や、二重ラインの調整、まぶたのたるみ取りなどは保険が使えず、自費診療になります。また、眉間のシワがすでに深くなっている場合や、まぶたを開けるときにおでこや眉に力を入れるクセが残っている場合は、眼瞼下垂の手術後に注射治療(ボトックスなど)を併用することで、シワの改善がより期待できる場合もあります。

眉間のシワを予防するには、マッサージやストレッチで表情筋の緊張をゆるめることが大切です。眉をやさしく動かすストレッチや、目のまわり、眉間のツボを温めてからマッサージを行うと、リラックス効果が高まり、目の疲れや軽い頭痛の緩和にもつながります。
また、肩こりや頭痛があると、顔の筋肉もこわばりやすくなり、表情に疲れが出てしまいます。普段から姿勢を意識し、首や肩のストレッチを取り入れることで、顔の緊張がほぐれ、痛みや表情ジワの軽減が期待できます。

地上に届く紫外線には「UVA」「UVB」「UVC」の3種類がありますが、その中でも約9割を占めるUVAは肌の奥深く真皮層にまで届き、肌のハリを保つエラスチンやコラーゲンを壊します。エラスチンやコラーゲンが傷つくと肌の弾力が失われて、シワができやすくなります。
紫外線対策には、SPF30・PA++以上の日焼け止めを顔全体にしっかり塗ることが大切です。汗をかいたり時間がたったりした場合には、こまめに塗り直すことも忘れずに。日焼け止めだけでなく、日傘や帽子、サングラスなども活用して、紫外線を防ぐようにしましょう。

毎日のスキンケアは、ヒアルロン酸やコラーゲン、セラミド配合の化粧品で保湿をしっかり行い、紫外線対策も欠かさず行うことが大切です。十分な睡眠と栄養バランスの良い食事、ストレスケアなど生活習慣を整えることもシワの予防につながります。

一度できてしまった眉間のシワは、マッサージやスキンケアなどセルフケアだけで根本的に解消することは難しい場合があります。

眼瞼下垂の症状がある場合、まぶたのマッサージは逆効果になることがあります。まぶたを強くこすったり、引っ張ったりすると、眼瞼挙筋腱膜や瞼板を傷つけ、たるみを悪化させたり、眼瞼下垂を悪化させたりするリスクがあります。
根本的な治療には手術が必要となる場合が多いため、専門の医師に相談し、適切な治療を受けることが大切です。

眉間の深いシワや眼瞼下垂に悩む人は少なくありません。眉間のシワが気になる場合には、眼瞼下垂が隠れている可能性があるため、シワの治療だけでなく、まぶたの状態も一緒に診てもらうことが大切です。眼瞼下垂を治療することで、眉間や額のシワが自然と改善する可能性があります。
逆に、まぶたの下垂を放置したままボトックスで眉間のシワだけを治療してしまうと、眼瞼下垂がある場合は、まぶたを開けるために使っていたおでこや眉間の筋肉が動かなくなり、視界が悪くなったり、まぶたがさらに重く感じるようになることがあります。
眼瞼下垂は、放置しても自然に治ることはほとんどありません。「まぶたが重い」「視界が狭く感じる」などの症状に気づいたら、自己判断せずに、早めに医師の診察を受けて、正確な診断と治療を受けることが大切です。

─ DOCTOR COMMENT ─

立花院長

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